CCTA Map冠動脈CT用語集
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冠動脈CTの画質とアーチファクト

狭窄度を判定する前に、画像をどこまで信頼できるかを把握しておく必要がある。本章では、SCCT 2026コンセンサスに基づき、検査全体の画質評価、評価不能区域、病変に類似したり病変を隠したりするアーチファクトを扱う。Nをカテゴリーとして用いるか修飾子として用いるかは、CAD-RADSの章で説明する。

要点

  • 検査全体の画質は、例えば極めて良好から診断不能までの視覚的スケールで評価し、存在するアーチファクト、その影響、実施した対策とともに記載する。
  • 血管径1.5 mm以上のセグメントが読影できない場合は、そのセグメントと原因となったアーチファクトをレポートに明記する。
  • セグメントを評価不能とする前に、他の心位相と再構成画像を確認する。多くのアーチファクトはそこで変化するか消失する。
  • 呼吸や体動によるモーションは胸骨と脊椎も偏位させ、心拍動によるモーションと異なり、別の心位相を再構成しても補正できない。
  • 高度石灰化部では視認できる最も高い狭窄度を記載し、ブルーミングにより過大評価している可能性を付記する。
  • 石灰化、ステント、高濃度の造影剤に接する低吸収帯はビームハードニングアーチファクトのことがあり、非石灰化プラークや灌流欠損に類似しうる。

マップでの例

評価不能区域

右冠動脈 (RCA) 中間部を「N」とし、評価可能な狭窄が軽度狭窄のみであるため、カテゴリーはNとなる(CAD-RADS N/P1)。Nをカテゴリーとする場合と修飾子とする場合の違いは、CAD-RADSの章で説明する。

このセクションの用語 (11)
  1. 検査画質
  2. 評価不能区域
  3. 未評価・評価不能・陰性
  4. モーションアーチファクト
  5. 位置ずれ(階段状)アーチファクト
  6. ブルーミングアーチファクト
  7. ビームハードニングアーチファクト
  8. 画像ノイズ
  9. 内腔の造影不良
  10. 多断面再構成と曲面再構成
  11. 最大値投影法と最小値投影法
表 1. 冠動脈CTでよくみられるアーチファクト:見え方、類似しうる所見、ワークステーションでの見分け方。
アーチファクト見え方類似しうる所見見分け方
心拍動によるモーション血管のぼけ。特に右冠動脈の垂直走行部狭窄。病変を隠すこともある胸骨と脊椎はずれず、別の心位相で血管が変化するか鮮明になる
呼吸・体動スラブ間ですべての構造がずれる狭窄または血管の途絶胸骨と脊椎もずれ、別の心位相では補正されない
位置ずれ(階段状)スラブ境界の水平な段差狭窄または血管の限局的な途絶矢状断・冠状断で見やすく、線が心臓全体を横切る
ブルーミング(石灰化・ステント)石灰化やステントストラットが太く、辺縁がぼけて見える実際より強い狭窄、ステント内再狭窄ウィンドウ幅を広げる、スライスを薄くする、シャープな再構成関数を用いると軽減する
ビームハードニング石灰化、金属、高濃度の造影剤に接する低吸収域・低吸収帯非石灰化プラーク、ステント内新生内膜増殖、灌流欠損高吸収構造から生じ、心位相間で変化し、高エネルギー画像で軽減する
ノイズ粒状の質感と、ランダムな明暗の線状影病変には類似しないが、非石灰化プラークを隠す均一な組織にも及び、厚いスライスやスムーズな再構成関数で改善する
造影不良・造影剤の混合内腔の吸収値が低い、または不均一非石灰化プラーク、狭窄壁肥厚がなく、心位相間や別のウィンドウで変化する

出典: SCCT 2026、「Image quality, artifacts & pitfalls」の項、pp. 13–18;心筋、p. 19;表4、p. 15

検査画質 Overall image quality#

別名: 画質, 画質評価, 画質グレード, 技術的画質 (「technical quality」。CAD-RADS 1.0のレポートテンプレートでの名称)

検査全体の画質には確立された基準がないため、SCCT 2026は視覚的スケールでの評価を推奨している。例として、極めて良好(excellent)、良好(good)、普通(average)、やや不良(fair)、不良(poor)、診断不能(non-diagnostic)が挙げられる。

記載例

検査画質:やや不良(内腔の造影不良のため遠位セグメントの評価は制限される)。

混同しやすい点: 画質の「診断不能」は検査全体を評価する視覚的スケールの1段階であり、CAD-RADS Nは、確信をもって読影できない血管径1.5 mm以上のセグメントに基づいて付与する。

関連項目: 評価不能区域 · 評価不能(N)のカテゴリーと修飾子 · 内腔の造影不良 · 画像ノイズ

出典: SCCT 2026、Reporting、d項「Image quality and findings」、表6、pp. 21・20 · “With no established standards for overall study quality, a visual schema such as excellent, good, average, fair, poor or non-diagnostic is recommended.”

詳細

読影での使い方: 所見の冒頭、各冠動脈の記載より前に記載する。SCCT 2026は、存在するアーチファクトの種類、読影への影響、実施した対策を併記するよう求めている。

注意点: 検査全体の画質が不良であることだけを理由にカテゴリーNとするのは誤りである。Nは、読影できなかったセグメントによって決まる。

他の文献: CAD-RADS 1.0のレポートテンプレートは、技術的画質の各段階をアーチファクトと対応させていた。excellentはアーチファクトなし、goodは軽微なアーチファクト、adequateは中等度のアーチファクト、poorまたはsuboptimalは高度のアーチファクトを伴うものとされた。SCCT 2026は6段階を示しているが、いずれも定義していない。 (CAD-RADS 1.0、図16)

CCTA Mapでは

「レポート下書き」の見出しの下に「臨床状況」「検査目的」と並ぶ「画質」セレクターにはこの6段階があり、初期値は「良好」である。選んだ段階は「検査画質:良好。」のような一文として所見の冒頭に入り、「—」を選ぶとこの一文は記載されない。「極めて良好」から「不良」までは、段階を変えてもCAD-RADSカテゴリーは変わらない。「診断不能」を選ぶと、画質の一文に冠動脈全体の評価が制限されている旨が加わり、所見のない血管とセグメントは「明らかな病変なし」や「同血管の他部位に明らかな病変なし」と記載され、インプレッションには「検査全体の画質は診断不能である。」が入る。さらに「N」を指定したセグメントが1つもない場合、プログラムはNの規則を検査全体に適用する。最大狭窄度が50%未満ならカテゴリーはNとなり(例:「CAD-RADS N/P1」)、50%以上なら狭窄度でカテゴリーを決めて修飾子Nを付ける(例:「CAD-RADS 3/P1/N」)。評価不能な個々のセグメントは、引き続き編集パネルの「N」ボタンで個別に指定する。

評価不能区域 Non-interpretable (nondiagnostic) segment#

別名: 評価不能セグメント, 診断不能区域, 読影不能セグメント, nondiagnostic segment (英語)

血管径1.5 mm以上のセグメントのうち、アーチファクトのために確信をもって読影できないものをいう。ガイドラインは、そのセグメントと原因となったアーチファクトを明記するよう求めている。

記載例

左前下行枝 (LAD) 近位部:石灰化プラーク、ブルーミングアーチファクトのため内腔を評価できず、狭窄度は確信をもって判定できない。

混同しやすい点: 評価不能区域はプラークがないセグメントを意味しない。狭窄度を判定できなくても、視認できるプラークは記載する。

関連項目: 評価不能(N)のカテゴリーと修飾子 · 未評価・評価不能・陰性 · ブルーミングアーチファクト · モーションアーチファクト

出典: SCCT 2026、Reporting、d項「Image quality and findings」;狭窄の項、p. 7 · “Whenever coronary segments are not interpretable, the affected segments and the causative artifact should be stated.”

詳細

読影での使い方: 評価不能とする前に、他の心位相、別の断面、別のウィンドウで確認する。それでも読影できない場合は、セグメントとアーチファクトを明記し、視認できるプラークを記載する。Nを用いる場合、CAD-RADS 2.0は、プラーク負荷全体を信頼性をもって評価できるとき(例えばカルシウムスコアによって)に限りPを付ける。カテゴリーへの影響はCAD-RADSの章で説明する。

注意点: 理由を書かずに「評価不能区域」とだけ記載すると、依頼医は何が検査を制限したのかを知ることができない。ガイドラインはセグメントとアーチファクトの両方を明記するよう求めている。

他の文献: プラーク定量において、SCCT 2024は画質と血管径を考慮する。高度のアーチファクトがあるセグメントは除外する。中等度のアーチファクトがあっても太い近位セグメントは解析できることがあり、軽度のアーチファクトでも細い遠位セグメントは解析できないことがある。 (SCCT 2024、2.2項)

CCTA Mapでは

編集パネルの「N」ボタンはセグメントを評価不能として動きでぶれた動脈のように二重の輪郭で表示する。指定すると、セグメントのプラークは消去されず保留される(ステントは残る)。セグメントは狭窄度なしの評価不能として記載され、カテゴリーから外れる。同じ1回のドラッグで描いた他のセグメントの部分は、狭窄度と所見を保ったまま引き続き算入される。Nを解除する、狭窄度を選ぶ(戻ったプラークに適用される)、または上から描くと、プラークはそのまま戻る。「見えるプラークを記載」を選ぶと、レポートは狭窄度を評価せずにプラークの種類を加える。一般的な原因は「✎ 下書きを編集」で実際のアーチファクトに書き換えられるが、編集した下書きはその後マップから更新されない。保留されたプラークは自動PのSISに数えられない。

マップのテンプレート出力(原文のまま)

検査画質:やや不良。

左前下行枝 (LAD):近位部:非石灰化プラーク、軽度狭窄(25-49%)、同血管の他部位に病変なし。分枝 D1、D2:病変なし。

右冠動脈 (RCA):中間部:画質不良のため評価不能、同血管の他部位に病変なし。分枝 AM、PDA、R-PLB:病変なし。

インプレッション 閉塞性冠動脈疾患の評価は困難(評価不能)。CAD-RADSカテゴリー N/P1。

非閉塞性病変:LAD。

評価不能区域:右冠動脈 (RCA) 中間部。

数値的な狭窄グレードは付与しない:本例では冠動脈CTAは管理の指針とならず、閉塞性冠動脈疾患を除外できない。追加または代替の評価(冠動脈CTA再検、機能的/負荷画像検査、または侵襲的血管造影)を考慮する。

未評価・評価不能・陰性 Not assessed, non-evaluable, and demonstrated absence#

別名: 所見なし (十分な画質で評価したうえでの陰性に相当), 未施行 (検査を行っていない場合の未評価に相当), 評価困難 (評価不能に相当。マップのインプレッションは「評価は困難(評価不能)」と併記する)

これらは3つの異なる結果である。陰性は、十分な画質で所見を探したうえで認めない場合をいう。評価不能は、アーチファクトのため、または必要な位相がないため、得られた画像では確信をもって評価できない場合をいう。未評価は、観察していない、または検査を行っていない場合をいい、実施しなかったCT-FFRがこれにあたる。

記載例

左前下行枝 (LAD) 近位部:ステント留置後、遠位血管は造影されるが、ストラットのブルーミングのためステント内再狭窄は評価不能。

混同しやすい点: I−は、CT-FFRまたはCTパーフュージョンを施行し、虚血が陰性であったことを示す。Iを含まないコードは虚血を否定しない。これには、どちらも施行していない場合と、施行した検査が評価不能であった場合があり、CAD-RADS 2.0では後者にNを付けることができる。

関連項目: 評価不能区域 · 評価不能(N)のカテゴリーと修飾子 · 修飾子I(CT-FFR) · 評価可能なステントと評価不能なステント

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、f項「False negative findings」、p. 15;Reporting、f項「Impression」、p. 21;表5、p. 20。CAD-RADS 2.0、3.3.1節(N)・3.3.5節(I)、表1 · “In-stent restenosis is classified as absent, mild (<50%), significant (≥50%), occlusion, or non-evaluable.”

詳細

読影での使い方: 「プラークなし」「再狭窄なし」のような否定の記載は、十分な画質で評価した部位に限る。インプレッションで正常とするには、プラークも狭窄もないことが必要である。評価不能な部位は原因とともに記載する。評価不能なものすべてにNを付けるわけではない。CAD-RADS 2.0はNを、確信をもって読影できない血管径1.5 mm以上のセグメントに用い、評価不能なCT-FFRまたはCTパーフュージョンにも適用できるとしている。

注意点: 評価可能なセグメントにはプラークがなく、評価不能なセグメントが1つある検査を、正常またはCAD-RADS 0とするのは誤りである。CAD-RADS 2.0ではCAD-RADS Nとなる。そのセグメントの有意狭窄を冠動脈CTでは除外できないためである。また、ステント遠位の血管が造影されることを根拠に「再狭窄なし」と記載してはならない。SCCT 2026は、遠位の造影だけでは再狭窄を除外できないと注意している。

CCTA Mapでは

既定では、マップは正常テンプレートを用い、所見のないセグメントは誰もマークしていなくても病変なしとして記載され、WordとPDFのボタンの下の灰色の1行がその旨を示す。「画質」が「診断不能」なら病変を同定できない旨の表現に、Pを「カルシウム(Agatston)」または「Pを選択」で設定してプラークを描いていなければ狭窄なしの表現になり、後者はプラークの存在を否定しない。編集パネルの「未評価」ボタンは評価していないセグメントを記録し、レポートには「未評価」と書かれる。「N」を指定したセグメントは評価不能として記載される。Iは、「⚙ 修飾子 P·I ▾」の「機能的虚血(修飾子I)」で、「経路」の「CT-FFR」または「CTP」の結果を入力した場合にのみ表示され、入力がなければコードにIは付かない。「N」を指定してもセグメントのプラークは消去されず保留される。これについては「評価不能区域」の項で説明する。

モーションアーチファクト Motion artifact#

別名: 体動アーチファクト, 心拍動によるアーチファクト, motion artifact (英語)

撮影中の心拍動、呼吸、体動により血管の輪郭がぼけるアーチファクトである。心拍動によるものは、右冠動脈のうち垂直に走行し可動性の大きい部分に最も多い。

記載例

右冠動脈 (RCA) 中間部:再構成したすべての心位相で残存する心拍動によるモーションアーチファクトのため評価不能。

混同しやすい点: モーションアーチファクトは血管の輪郭をぼかし、位置ずれアーチファクトは異なる心拍で撮影されたスラブの境界で構造を急にずらす。

関連項目: 位置ずれ(階段状)アーチファクト · 評価不能区域 · 右冠動脈の近位部・中間部・遠位部

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、c項「Motion artifacts」、pp. 14–15 · “Cardiac motion appears as vessel blurring, most commonly in the highly mobile vertical segment of the right coronary artery”

詳細

読影での使い方: まず前胸壁と脊椎を確認する。スラブ間でずれていれば原因は呼吸または体動であり、再撮影でしか補正できない。ずれていなければ別の心位相を再構成する。心拍数が高い場合は収縮期が適することが多い。

注意点: 別の心位相を確認せずに、ぼけたセグメントの狭窄度を判定するのは誤りである。モーションは病変に類似することも、病変を隠すこともある。ぼけが解消しなければ、そのセグメントは評価不能とする。

他の文献: SCCT 2014は、血管のぼけを1心拍内のモーションによるものとし、別の再構成で補正できることがあるとしていた。一方、呼吸や体動を含む心拍間のモーションは階段状アーチファクト(現在の位置ずれアーチファクト)を生じるとしていた。 (SCCT 2014、5.1.1項)

CCTA Mapでは

マップはアーチファクトの種類を記録しない。モーションのためにセグメントを読影できない場合は「N」で指定し、テンプレートを編集する際に一般的な原因「画質不良のため」を「モーションアーチファクトのため」に書き換える。「N」を指定してもセグメントのプラークは消去されず保留され、Nを解除すると戻る。レポートにプラークを記載する方法は「評価不能区域」の項で説明する。

マップのテンプレート出力(原文のまま)

検査画質:普通。

左前下行枝 (LAD):中間部:部分石灰化プラーク、中等度狭窄(50-69%)、同血管の他部位に病変なし。分枝 D1、D2:病変なし。

右冠動脈 (RCA):中間部:画質不良のため評価不能、同血管の他部位に病変なし。分枝 AM、PDA、R-PLB:病変なし。

インプレッション 中等度の閉塞性冠動脈疾患。CAD-RADSカテゴリー 3/P1/N。

閉塞性病変(≥50%):LAD。

評価不能区域:右冠動脈 (RCA) 中間部。

評価可能な冠動脈所見は本カテゴリーに合致し、これに基づき管理可能である。N修飾子は評価不能区域における限局性病変を除外できないことを示すのみで、検査全体が評価不能であることを意味しない。

位置ずれ(階段状)アーチファクト Misalignment (stair-step) artifact#

別名: 階段状アーチファクト (「stairstep」。SCCT 2026の用語), 移行アーチファクト (「transition artifact」。SCCT 2026の用語), ステップアーチファクト (「step artifact」。SCCT 2023標準用語で非推奨) 非推奨, ミスレジストレーションアーチファクト (「misregistration artifact」。SCCT 2023標準用語で非推奨) 非推奨, レジストレーションアーチファクト (「registration artifact」。SCCT 2023標準用語で非推奨) 非推奨, misalignment artifact (英語)

異なる心拍で撮影されたスラブの境界で、構造が急にずれる現象である。多くは不整脈または不適切な心電図同期による。

記載例

左前下行枝 (LAD) 中間部の高さに狭窄に類似する位置ずれアーチファクトがあり、別の心位相の再構成では消失する。

混同しやすい点: 段差が胸骨と脊椎にも及ぶ場合、原因は呼吸または体動であり、別の心位相では補正できない。心臓だけに及ぶ場合は多くが不整脈または不適切な心電図同期によるもので、別の心位相で解消しうる。

関連項目: モーションアーチファクト · 評価不能区域 · 多断面再構成と曲面再構成

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、c項「Motion artifacts」、p. 14 · “Transition (stairstep or misalignment) artifacts occur at slab interfaces from different cardiac cycles, typically due to irregular rhythm or incorrect rhythm gating”

詳細

読影での使い方: 矢状断と冠状断の再構成画像で確認する。段差は心臓全体を横切る水平線として見える。偽病変が疑われる場合は、別の心位相を再構成するか、エッジ補正(edge correction)アルゴリズムをオフにして真のスラブ境界を表示する。

注意点: 2つのスラブの境界と一致する狭小化の狭窄度を判定すると、偽陽性となりうる。先に別の心位相、またはエッジ補正なしの画像で確認する。

他の文献: SCCT 2023の標準用語は「misalignment artifact(位置ずれアーチファクト)」を推奨し、従来の「step artifact」「misregistration artifact」「registration artifact」を非推奨としている。SCCT 2026は、transition(移行)、stairstep(階段状)またはmisalignment(位置ずれ)artifactと呼んでいる。 (SCCT 2023標準用語、表4)

CCTA Mapでは

マップにはこのアーチファクト専用の操作はない。確認後も読影できないセグメントは「N」で指定し、テンプレートの一般的な原因「画質不良のため」を「位置ずれアーチファクトのため」に書き換える。「N」を指定してもセグメントのプラークは消去されず保留され、Nを解除すると戻る。レポートにプラークを記載する方法は「評価不能区域」の項で説明する。

ブルーミングアーチファクト Blooming artifact#

別名: ブルーミング, ブルーミング効果, 部分容積効果 (SCCT 2023標準用語が推奨する、物理現象としての名称。分岐部やスラブ境界の偽病変の原因にもなる), 石灰化ブルーミング (「calcium blooming」。SCCT 2023標準用語は旧称として非推奨とするが、SCCT 2026とCAD-RADS 2.0はbloomingを用いる), blooming artifact (英語)

各ボクセル内の部分容積効果により、内腔と石灰化またはステントとの境界がぼける。高吸収の物質が実際より大きく見え、狭窄は過大評価される。

記載例

左前下行枝 (LAD) 近位部:石灰化プラーク、高度狭窄(70–99%)、石灰化のブルーミングにより狭窄度を過大評価している可能性がある。

混同しやすい点: 石灰化越しに内腔が見える場合は、視認できる最も高い狭窄度を過大評価の可能性とともに記載する。ブルーミングで内腔が隠れる場合はセグメントを評価不能とするが、プラークは記載する。

関連項目: 石灰化プラーク · ビームハードニングアーチファクト · 評価不能区域 · 評価可能なステントと評価不能なステント

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、e項「Blooming artifact」、表5、pp. 15・20 · “Blooming artifact results from partial volume averaging within a voxel, causing blurring at interfaces between coronary arteries and calcified plaques or stents and leading to overestimation of luminal stenosis”

詳細

読影での使い方: シャープな再構成関数による薄いスライス、利用できれば高エネルギーの仮想単色X線画像で確認する。高度石灰化部では視認できる最も高い狭窄度を記載し、過大評価の可能性を付記する。内腔を識別できないステントは、ステント内再狭窄について評価不能と記載する。

注意点: 高度石灰化部の狭窄を通常のウィンドウで計測すると、ブルーミングが強調される。この計測では、石灰化の辺縁を識別できるまでウィンドウ幅を広げる。

他の文献: SCCT 2023の標準用語は「partial volume averaging(部分容積効果)」を推奨し、「calcium blooming」を非推奨の旧用語としている。SCCT 2026とCAD-RADS 2.0は「blooming」を用いており、本用語集もこれに従う。 (SCCT 2023標準用語、表4)

CCTA Mapでは

「石灰化」プラークで狭窄度が50–99%の場合、テンプレートは所見に「石灰化のブルーミングにより狭窄度を過大評価している可能性がある」を加える。ステントと同じセグメントでステントより近位または遠位にあるプラークにも、この注記が付く。インプレッションには、治療方針が狭窄度に依存する場合にCT-FFRまたは機能的検査を考慮する一文が加わる。ステントまたはグラフトのある患者では機能的検査のみを勧める。そのプラークのある領域にCT-FFRまたはCTPの結果がすでに入力されていれば、この一文は加えない。「N」を付けたステントは「アーチファクトまたは小径のためステント内再狭窄の評価不能」と記載される。「N」を指定してもプラークは消去されず保留される(ステントは残る)。セグメントは評価不能として記載され、「見えるプラークを記載」を選ぶと、レポートは狭窄度を評価せずに石灰化プラークを記載する。Nを解除するとプラークは戻る。「評価不能区域」の項を参照。

マップのテンプレート出力(原文のまま)

左前下行枝 (LAD):近位部:アーチファクトまたは小径のためステント内再狭窄の評価不能、同血管の他部位に病変なし。分枝 D1、D2:病変なし。

左回旋枝 (LCX):近位部:石灰化プラーク、軽微狭窄(1-24%)、同血管の他部位に病変なし。分枝 OM1、OM2、L-PLB:病変なし。

右冠動脈 (RCA):近位部:石灰化プラーク、軽度狭窄(25-49%)、中間部:石灰化プラーク、軽微狭窄(1-24%)、同血管の他部位に病変なし。分枝 AM、PDA、R-PLB:病変なし。

インプレッション 閉塞性冠動脈疾患の評価は困難(評価不能)。CAD-RADSカテゴリー N/P2/S。

非閉塞性病変:LCXおよびRCA。

CCTAは小径ステント(約3mm未満)のステント内再狭窄に対する精度が限られる。臨床的に疑われる場合は機能的画像検査または侵襲的血管造影を考慮すること。

評価不能区域:左前下行枝 (LAD) 近位部。

数値的な狭窄グレードは付与しない:本例では冠動脈CTAは管理の指針とならず、閉塞性冠動脈疾患を除外できない。追加または代替の評価(冠動脈CTA再検、機能的/負荷画像検査、または侵襲的血管造影)を考慮する。

ブルーミングの模式図:石灰化上では実際の40%狭窄が60%と計測され、ステントでは見かけの内腔が狭くなる

マップで例を開く CAD-RADS N/P2/S →図を拡大表示

図 1. 部分容積効果により、石灰化とステントストラットの吸収値が隣接するボクセルに広がり、見かけの内腔が狭くなる。この例では、実際には40%の狭窄が60%と計測され、軽度狭窄から中等度狭窄に変わる。

ビームハードニングアーチファクト Beam-hardening artifact#

別名: 線質硬化, ビームハードニング, ストリークアーチファクト (「streak artifact」。SCCT 2023標準用語はビームハードニングの呼称として非推奨) 非推奨, beam-hardening artifact (英語)

金属、石灰化、高濃度の造影剤は低エネルギー光子を選択的に吸収する。その近傍に低吸収域や線状影が生じ、非石灰化プラークや灌流欠損に類似することがある。

記載例

右冠動脈 (RCA) 近位部:石灰化プラーク、隣接する低吸収帯は高エネルギーの仮想単色X線画像で軽減し、ビームハードニングアーチファクトに矛盾しない。

混同しやすい点: ブルーミングは石灰化やステントストラットを実際より大きく見せて狭窄を過大評価させる。ビームハードニングはそれらに接する低吸収域を生じ、非石灰化プラークやステント内新生内膜増殖に類似する。

関連項目: ブルーミングアーチファクト · 部分石灰化プラーク · ステント内再狭窄 · 修飾子I(負荷CTパーフュージョン)

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、d項「Beam hardening and metallic artifacts」、心筋の項、pp. 15・19 · “Beam-hardening artifacts arise from preferential attenuation of low-energy photons by metal, calcium, or dense contrast, producing low-attenuation areas or streaks adjacent to bright artifacts”

詳細

読影での使い方: 低吸収域が石灰化、金属、高濃度の造影剤から生じている場合に疑う。他の心位相、より強い逐次近似再構成、または高エネルギーの仮想単色X線画像で確認する。心筋では左室の心基部下側壁と心尖部にみられることが多い。

注意点: 石灰化に接する低吸収帯を非石灰化成分とみなすと、プラークの種類を誤ることになる。心位相間で変化する場合や高エネルギー画像で軽減する場合は、アーチファクトの可能性が高い。

他の文献: SCCT 2023の標準用語は、ビームハードニングを「streak artifact(ストリークアーチファクト)」と呼ぶことを非推奨としている。SCCT 2026は金属アーチファクトを別項で記載しており、これは明暗の線状影を生じる。 (SCCT 2023標準用語、表4)

CCTA Mapでは

マップはこのアーチファクトを記録しない。低吸収帯がアーチファクトと判断された場合は、編集パネルの「プラークの種類」で「石灰化」を選ぶ。このとき編集パネルは、そのプラークから「⬤ 低吸収」と「◎ ナプキンリング」の所見を外し、両方のボタンを選択できなくする。

画像ノイズ Image noise#

別名: ノイズ, 量子ノイズ, 画像SD (CT値の標準偏差), image noise (英語)

光子数が少ないと画像は粒状となり、明暗の線状影がランダムに現れる。過剰なノイズは軟部組織、特に非石灰化プラークの描出を妨げる。

記載例

体格による過剰な画像ノイズのため、非石灰化プラークの検出は制限される。

関連項目: 非石灰化プラーク · 検査画質 · 評価不能区域 · 未評価・評価不能・陰性

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、a項「Excessive noise」、表4、pp. 14・15 · “Image noise from low photon counts appears as granular texture with random bright and dark streaks.”

詳細

読影での使い方: 主な原因は、肥満、体格に対して低すぎる管電流または管電圧、心電図同期管電流変調で低線量となる区間から再構成した心位相である。スライス厚を厚くする、スムーズな再構成関数を用いる、逐次近似再構成を強めることで低減できるが、空間分解能は低下する。

注意点: プラークが見えないという理由で、ノイズの多いセグメントを正常とするのは誤りである。ノイズは非石灰化プラークを隠す。プラークを除外できない場合は、その限界をレポートに記載する。

他の文献: SCCT 2014は、均一な組織に置いた関心領域(ROI)のCT値の標準偏差としてノイズを計測することを認めていた。軽度・中等度・高度と記載することも認めていたが、これらの段階は標準化されていないと述べていた。 (SCCT 2014、10.6.1項)

CCTA Mapでは

マップにはノイズ専用の操作はない。ノイズの程度は「レポート下書き」の「画質」セレクターに反映させ、ノイズのために読影できないセグメントは編集パネルの「N」ボタンで指定する。「診断不能」を選び、「N」を指定したセグメントがない場合、プログラムはNの規則を検査全体に適用する。これについては「検査画質」の項で説明する。「N」を指定してもセグメントのプラークは消去されず保留され、Nを解除すると戻る。レポートにプラークを記載する方法は「評価不能区域」の項で説明する。

内腔の造影不良 Suboptimal contrast enhancement#

別名: 造影不良, 造影効果不良, 造影不足, suboptimal contrast enhancement (英語)

体格、循環時間の延長、注入手技、造影剤の血管外漏出などにより、内腔が十分に造影されない状態である。造影剤と血液の混合(コントラストミキシング)は、非石灰化プラークや狭窄に類似することがある。

記載例

左前下行枝 (LAD) 遠位部:内腔の造影不良のため評価不能。

混同しやすい点: 造影剤の混合による低吸収は心位相間で変化し、壁肥厚を伴わない。非石灰化プラークは壁を肥厚させ、すべての心位相で持続する。

関連項目: 非石灰化プラーク · 評価不能区域 · 検査画質

出典: SCCT 2026、Image quality, artifacts & pitfalls、b項「Suboptimal contrast enhancement」・g項「False positive findings」、pp. 14・17 · “Suboptimal contrast enhancement, contrast mixing, and flow artifacts can mimic non-calcified plaque or luminal stenosis”

詳細

読影での使い方: 判断に迷う部位は、他の心位相、別のウィンドウ、厚いスライスで確認し、壁肥厚があるのか、内腔の吸収値が低いだけなのかを見分ける。低エネルギーの仮想単色X線画像は内腔の造影効果を高める。

注意点: 造影不良の遠位セグメントを、プラークがないものとして扱うのは誤りである。内腔を識別できなければそのセグメントは評価不能であり、原因とともに記載する。

他の文献: SCCT 2016の撮影ガイドラインは、最適な画像には動脈内のCT値 250 HU超の造影効果が必要であるとしている。SCCT 2026は、造影不良とする数値の閾値を定めていない。 (SCCT 2016撮影ガイドライン、4.12.1項)

CCTA Mapでは

マップでは造影効果を個別に記録しない。「レポート下書き」の「画質」セレクターに反映させ、造影不良のため読影できないセグメントは編集パネルの「N」ボタンで指定する。「診断不能」を選び、「N」を指定したセグメントがない場合、プログラムはNの規則を検査全体に適用する。これについては「検査画質」の項で説明する。「N」を指定してもセグメントのプラークは消去されず保留され、Nを解除すると戻る。レポートにプラークを記載する方法は「評価不能区域」の項で説明する。

多断面再構成と曲面再構成 Multiplanar and curved multiplanar reformat MPR・CPR#

別名: multiplanar reformat (英語。SCCT 2023標準用語とSCCT 2026が推奨する名称), curved MPR (SCCT 2026の表記), CMPR (SCCT 2026の略語。SCCT 2023標準用語はcMPRと書く), curved planar reformat (RadLexの名称で、SCCT 2023標準用語が収載している。略語CPRの由来), ストレートCPR, straightened MPR (sMPR。血管をまっすぐに表示する曲面再構成の変法)

多断面再構成(MPR)は、撮影したボリュームを任意の断面で表示する。曲面再構成(CPR)は動脈の中心線に沿って走行全体を1枚の長軸像に展開し、その軸の周りに360°回転させて観察できる。血管の横断像(血管短軸像)は中心線に直交する断面で、内腔と壁を全周にわたって含み、通常はプラークの大きさと組成を最もよく示す。

記載例

軸位断像に加え、各冠動脈を斜位多断面再構成像、曲面再構成像、血管短軸像で評価。

混同しやすい点: 軸位断像と血管の横断像(血管短軸像)。軸位断像は撮影データを再構成する体軸断面で、SCCT 2026は「transverse」とも呼び、日本語でも「横断像」と呼ばれることが多い。血管の横断像は中心線に直交する断面であり、軸位断像と一致するのは動脈が頭尾方向に走行する部分だけである。

関連項目: 径狭窄率 · 偏心性プラークと求心性プラーク · 非石灰化プラーク · 最大値投影法と最小値投影法

出典: SCCT 2026、画像形式(b. Multiplanar reformats、c. Curved and straightened MPR)、p. 2;冠動脈の読影、p. 4;動脈硬化性プラーク、p. 5;定性的・定量的狭窄度評価、p. 7;偽陰性・偽陽性・過大評価、pp. 15–17 · “Attention should be paid to post-processing artifacts including centerline misregistration, which can result in false-positive stenosis.”

詳細

読影での使い方: 狭窄は血管短軸像と、互いに直交する少なくとも2つの長軸方向の断面で評価し、内腔を正常な参照セグメントと比較する。中心線の誤りは偽狭窄を生じうるため、曲面再構成で見た狭小化を報告する前に、その区間で中心線が内腔の中心を通っていること、狭小化が血管短軸像、別の断面、再構成した他の心位相でも持続することを確認する。ストレートCPR(sMPR)は血管をまっすぐに表示し、最も強い狭窄の位置の特定に役立つ。定量ソフトウェアは、sMPRまたは2方向斜位の直交MPRから得た血管短軸像で径と面積を計測する。冠状断と矢状断は、位置ずれアーチファクトの段差などのアーチファクトの確認に役立つ。

注意点: 自動の曲面再構成だけで狭窄度を評価すること。中心線が内腔の中心から外れると、再構成は動脈を軸から外れた位置で切り、実際にはない狭窄を示すことがある。また、長軸方向の断面1つだけでは偏心性狭窄を過小評価することがある。

他の文献: SCCT 2023の標準用語は「multiplanar reformat」(MPR)と「curved multiplanar reformat」(cMPR)を推奨し、「curved multiplanar reconstruction」を推奨しない旧称とし、「reconstruction」は撮影した投影データから画像を算出する処理に限っている。本用語集は、他の項目と同様に「再構成」を用いる。SCCT 2026が引用するAnders 2011の研究では、曲面再構成による半自動の血管抽出は対話的なMPRに比べて正診率を改善せず、著者らは、特に経験の少ない読影者には自動の曲面再構成だけを用いることを推奨していない。 (SCCT 2023標準用語、表3;Anders 2011、Eur J Radiol、抄録)

冠動脈CTの画像形式:それぞれが示すもの、用途、限界。
形式示すもの用途限界・注意点
軸位断元画像。空間分解能と濃度の忠実度が最も高いボリューム全体の確認。120 kVpではウィンドウレベル300、ウィンドウ幅800を初期値とし、体格、石灰、造影増強に応じて調整する屈曲した血管を追いにくい
斜位MPR・血管短軸MPR利用できる最も薄いスライス(例:0.6 mmまたは0.4 mm)で任意の断面に表示したボリューム血管を追跡し、プラークと、その内腔や壁への影響を観察する狭窄は血管短軸像と、直交する2つの長軸方向の断面で確認する
曲面再構成(CPR)血管の走行全体を1枚の長軸像に展開し、360°回転できる屈曲した血管を追跡し、任意の位置で長軸像と短軸像を得る中心線の誤りは偽狭窄を生じ、1断面だけでは偏心性狭窄を過小評価しうる
ストレートCPR(sMPR)血管を直線に変換した像最も強い狭窄の位置の特定、プラークと冠動脈周囲脂肪の評価、定量曲面再構成から作るため、その中心線も確認する
MIP各視線上で最もCT値の高いボクセル:造影された内腔と石灰5–10 mmでは起始、走行、病変の位置の把握。薄いスラブでは見落とされやすい病変の検出狭窄度評価には使えない:非石灰化プラークを過小評価し、石灰化プラークを過大評価し、灌流欠損を隠す
MinIP最もCT値の低いボクセル心筋の灌流欠損と弁SCCT 2026は心筋と弁についてのみ言及している
ボリュームレンダリング(VRT)解剖の3次元画像冠動脈異常、グラフト、先天性心疾患、手技計画、狭窄の位置の把握狭窄を定量できず、石灰化プラークを十分に評価できず、非石灰化プラークは描出されない

出典: SCCT 2026、「CCTA image formats」、a–e項およびh項、pp. 2–3;定量的狭窄度評価、p. 7;偽陰性、p. 15;心筋、p. 19

CCTA Mapでは

マップは画像も再構成像も表示しない。マップには放射線科医がワークステーションですでに評価した所見を入力し、各狭窄をどの断面で評価したかは記録されない。「重症度」の0〜5のボタンまたは「狭窄度」スライダーで選ぶ狭窄度は、血管短軸像と2つの長軸方向の断面で確認したものとする。

最大値投影法と最小値投影法 Maximum and minimum intensity projection MIP・MinIP#

別名: 最大値投影, 最小値投影, thin-slab MIP, スラブMIP (厚さ数mmのスラブによるMIP), MiniP (SCCT 2026の心筋の項での略語の表記)

最大値投影法(MIP)は、選んだ厚さのスラブを通る各視線上で最もCT値の高いボクセルを表示し、最小値投影法(MinIP)は最もCT値の低いボクセルを表示する。MIPは造影された内腔と石灰を強調し、MinIPは心筋の灌流欠損のような低吸収域を強調する。MIPは奥行き方向のCT値の情報を失うため、狭窄度の評価には信頼できない。

記載例

左室中部下壁セグメントに心内膜下低吸収域、狭いウィンドウ幅の短軸MinIP像で描出。

この例の前提: 低吸収域が心周期の複数の位相で持続すること。位相によって現れたり位置が変わったりする場合は、ビームハードニングなどのアーチファクトを考える。

混同しやすい点: 同じスラブ厚のMIP、MinIP、平均化MPR。MIPは最もCT値の高いボクセルを示して灌流欠損を覆い隠し、MinIPは最も低いボクセルを示して欠損を強調し、平均化MPRは平均のCT値を示す。

関連項目: 多断面再構成と曲面再構成 · 修飾子I(負荷CTパーフュージョン) · ビームハードニングアーチファクト · 中枢側・末梢側吻合部と末梢ランオフ

出典: SCCT 2026、画像形式(d. Maximal intensity projection、h. Other image types)、p. 3;偽陰性・偽陽性、pp. 15–16;心筋、p. 19。SCCT 2023標準用語、表3 · “MIP should not be interpreted in isolation because it lacks in-depth attenuation information and is unreliable for stenosis assessment, underestimating noncalcified plaque and overestimating calcified disease”

詳細

読影での使い方: SCCT 2026は、長い区間をノイズを抑えて追跡し、起始、走行、病変の位置を示すために、5–10 mmのMIPスラブを提案している。薄いスラブのMIPは、分岐部の近く、細い血管、グラフト吻合部より遠位で見落とされやすい病変を見つけ、蛇行または屈曲した血管でのみかけ上の狭窄を明らかにするのに役立つ。MIPで見たものは、その後、薄いスライスのMPRで狭窄度を評価する。心筋の灌流は、複数の断面(短軸、四腔、二腔)で、5–8 mmの平均化MPRまたはMinIPと狭いウィンドウ(例:ウィンドウ幅200、ウィンドウレベル100 HU)を用いるとよりよく評価できる。MinIPは弁の評価にも用いられる。

注意点: MIPで狭窄度を評価したり、MIPで灌流欠損を探したりすること。SCCT 2026は、MIPは非石灰化プラークを過小評価し、石灰化プラークを過大評価するため単独で読影してはならず、心筋では欠損を覆い隠すため避けるべきだとしている。

他の文献: SCCT 2026が偽陰性・偽陽性所見について引用するKarlo 2012の総説は、MIPを血管造影に似た画像と説明し、プラークの位置の把握に3–5 mmのスラブを用い、10 mmを超えるスラブは所見を隠したり、壁の石灰や近傍のステントによる偽陽性を生じたりしうるため推奨していない。SCCT 2021では、ファーストパスの灌流は短軸の8 mm MinIPと狭いウィンドウで評価し、瘢痕がヨードを保持して高吸収にみえる遅延造影は、5 mmまたは10 mmの厚いMPRかMIPで評価する。 (Karlo 2012、Insights Imaging、「Post-processing」および「Evaluation of coronary arteries: step one」;SCCT 2021、4.8節、p. 208)

CCTA Mapでは

マップは画像を表示せず、所見をどの再構成で見たかも記録しない。安静時冠動脈CTでみた心筋の低吸収域には専用の入力項目がないため、「✎ 下書きを編集」で記載する。編集した下書きは、以後マップと連動して更新されない。「⚙ 修飾子 P·I ▾」の「機能的虚血(修飾子I)」には、「経路」の「CT-FFR」と「CTP」で、CT-FFRまたは負荷CTパーフュージョンの結果だけを入力する。

確認問題

要点を確認するための短い問題である。選択肢を選ぶと解答が表示される。

1右冠動脈中間部が、再構成したすべての心位相を確認してもモーションでぼけたままであり、他の冠動脈は読影可能である。SCCT 2026によれば、レポートに何を記載すべきか。

2曲面MPRで、左前下行枝遠位部に辺縁が直線的な狭小化がみられる。同じ高さの矢状断では水平線を境に心臓の輪郭がずれているが、胸骨と脊椎は連続している。最も考えられるのはどれか。

3左前下行枝近位部の高度石灰化プラークによる狭窄が、広いウィンドウとシャープな再構成関数で確認しても約75%に見える。SCCT 2026ではどのように記載するか。

4右冠動脈近位部の高度石灰化に接して低吸収帯がある。別の心位相では形が変わり、高エネルギーの仮想単色X線画像ではほぼ消失する。これは何か。

5BMI 45の患者で、画像が粒状になり動脈壁が見えにくい。ノイズを低減する再構成の変更はどれか。

次のステップ症例のレポート全体をマップで作成する →冠動脈樹に病変を記入すると、推奨カテゴリーと編集可能なレポートのテンプレートが得られる。

参考文献

  1. Rajiah PS, Alkadhi H, Andreini D, Bullock-Palmer RP, Chinnaiyan K, Chow B, et al. Interpretation and reporting of coronary computed tomographic angiography (2026 update): an expert consensus document of the Society of Cardiovascular Computed Tomography (SCCT). J Cardiovasc Comput Tomogr. 2026. doi:10.1016/j.jcct.2026.08.014 最終版(version of record)は2026年9月にCC BY 4.0でオンライン公開されたが、まだ巻号は割り当てられていない。引用ページはこの公開版PDFに基づく。
  2. Cury RC, Leipsic J, Abbara S, Achenbach S, Berman D, Bittencourt M, et al. CAD-RADS 2.0 - 2022 Coronary Artery Disease-Reporting and Data System: an expert consensus document of the SCCT, ACC, ACR and NASCI. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2022;16(6):536-57. doi:10.1016/j.jcct.2022.07.002
  3. Koweek L, Achenbach S, Berman DS, Carr JJ, Cury RC, Ghoshhajra B, et al. Standardized medical terminology for cardiac computed tomography 2023 update: an expert consensus document of the SCCT, AAPM, ACR, NASCI and RSNA. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2023;17(5):345-54. doi:10.1016/j.jcct.2023.06.002
  4. Narula J, Chandrashekhar Y, Ahmadi A, Abbara S, Berman DS, Blankstein R, et al. SCCT 2021 expert consensus document on coronary computed tomographic angiography: a report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2021;15(3):192-217. doi:10.1016/j.jcct.2020.11.001
  5. Neves PO, Andrade J, Monção H. Coronary artery calcium score: current status. Radiol Bras. 2017;50(3):182-9.
  6. Tamburino C, Tomasello SD, Capodanno D, Di Salvo ME, Marzà F, Galassi AR. Long-term follow-up after drug eluting stent implantation in left main trifurcations. EuroIntervention. 2009;5(4):432-7. doi:10.4244/eijv5i4a68
  7. Kovacevic M, Burzotta F, Elharty S, Besis G, Aurigemma C, Romagnoli E, et al. Left main trifurcation and its percutaneous treatment: what is known so far? Circ Cardiovasc Interv. 2021;14(3):e009872. doi:10.1161/CIRCINTERVENTIONS.120.009872
  8. Kim C, Park CH, Lee BY, et al. 2024 consensus statement on coronary stenosis and plaque evaluation in CT angiography from the Asian Society of Cardiovascular Imaging-Practical Tutorial (ASCI-PT). Korean J Radiol. 2024;25(4):331-42. doi:10.3348/kjr.2024.0112

「他の文献」で引用した文献

  1. Leipsic J, Abbara S, Achenbach S, Cury R, Earls JP, Mancini GBJ, et al. SCCT guidelines for the interpretation and reporting of coronary CT angiography: a report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography Guidelines Committee. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2014;8(5):342-58. doi:10.1016/j.jcct.2014.07.003
  2. Cury RC, Abbara S, Achenbach S, et al. CAD-RADS: Coronary Artery Disease – Reporting and Data System. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2016;10(4):269-81. doi:10.1016/j.jcct.2016.04.005
  3. Nieman K, García-García HM, Hideo-Kajita A, et al. Standards for quantitative assessments by coronary computed tomography angiography (CCTA): an expert consensus document of the SCCT. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2024;18(5):429-43. doi:10.1016/j.jcct.2024.05.232
  4. Koweek L, Achenbach S, Berman DS, et al. Standardized medical terminology for cardiac computed tomography 2023 update: an expert consensus document of the Society of Cardiovascular Computed Tomography (SCCT), American Association of Physicists in Medicine (AAPM), American College of Radiology (ACR), North American Society for Cardiovascular Imaging (NASCI), and Radiological Society of North America (RSNA). Radiol Cardiothorac Imaging. 2023;5(4):e230167. doi:10.1148/ryct.230167
  5. Abbara S, Blanke P, Maroules CD, et al. SCCT guidelines for the performance and acquisition of coronary computed tomographic angiography: a report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography Guidelines Committee. Endorsed by the North American Society for Cardiovascular Imaging (NASCI). J Cardiovasc Comput Tomogr. 2016;10(6):435-49. doi:10.1016/j.jcct.2016.10.002

本用語集は、SCCT 2026コンセンサスの定義、表および図を日本語に翻訳し、改変したものである。出典:Rajiah PS, et al. Interpretation and reporting of coronary computed tomographic angiography (2026 update): an expert consensus document of the Society of Cardiovascular Computed Tomography (SCCT). J Cardiovasc Comput Tomogr. 2026. doi:10.1016/j.jcct.2026.08.014(CC BY 4.0ライセンスで公開)。変更点は、平易な表現への書き換えと表の再構成である。本用語集の図はマップの動的な模式図であり、ガイドラインの図をそのまま再現したものではない。本用語集はSCCTの審査・承認を受けたものではない。 CC BY 4.0